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iPhone OS 3.0でアプリはどう変わるか? 7つの予想

大量の機能が無料で追加されたiPhoneの新OS。コピペ機能の搭載などで一気に便利になったわけだが、iPhone最大の魅力とも言えるアプリケーションの世界はどう動くのだろうか。

大量の機能が無料で追加されたiPhoneの新OS。コピペ機能の搭載などで一気に便利になったわけだが、iPhone最大の魅力とも言えるアプリケーションの世界はどう動くのだろうか。

「もっと画期的なアプリ、出てこないかね」と思っている人は多いのではなかろうか。

 iPhone OS 3.0がやってきた。iPod touchを含めれば世界で4000万台が一気に新OSに入れ替えられる。「60万台から100万台のあいだのどこか」と言われている国内iPhoneもその対象になるわけだ。無料で性能が上がるんだから、当然アップグレードするだろう(iPod touchは1200円だが)。6月26日に日本でも発売されるiPhone 3GSはもちろん、デフォルトでiPhone OS 3.0を搭載している。

 では、iPhone OS 3.0でいったいどこが変わるのか? 林信行氏の記事「WWDC 2009基調講演を振り返る:未来のiPhoneアプリと開発者の物語」に書かれているように、AppleはWWDC基調講演で、iPhone 3.0アプリの未来像を描いてみせた。

 ここでは、iPhone OS 3.0がリリースされた直後の動きから、コンテンツがどう変わるか、7つの予想をたててみようと思う。

(1)Webサービスがさらに大挙してiPhoneアプリに

(2)紙の雑誌がiPhoneアプリに

(3)ダウンロードコンテンツが花盛りに

(4)iPhoneアプリはDS、PSPデベロッパーの実験場になる

(5)AR(拡張現実)が現実に

(6)iTunes連動は前提に

(7)キーボードが使えるようになる

 では1つずつ見ていこう。

Webサービスがさらに大挙してiPhoneアプリに
 優れたWebサービスがどんどん世に送り出されているが、難しいのはマネタイズだ。これまでは面白いWebサービスはPC向けをまず作って、よければ携帯版を出して、そこで課金して稼ぐ、というパターンが多かったが、携帯ビジネスも頭打ちになっている。

 一方、iPhone OS 3.0になると、Safariの性能が上がり、JavaScriptの速度が高速化され、HTML5に対応。従来と違ってIDやパスワードを保存してくれるから、ほぼPCのWebサイトと同じ使い勝手で利用できることになる。iPhone用アプリケーション内で使えるブラウザ機能も基本的にその高速性や機能アップの恩恵に預かれる。

 つまり、iPhone向けであれば、特に携帯端末向けにサブセットにしなくても、新たにタッチインタフェースのガワをかぶせることができれば、アプリにして売ることができるのだ。無料にして広告モデルをとることももちろん可能だ。PCユーザーのみをターゲットとした過当競争に陥っているWeb広告よりも、こちらのほうが有望と言える。

 現在のiPhoneデベロッパーは、古参のMac系デベロッパー以外では携帯コンテンツ系のところがかなり多い。これからは、PC用Webサービス企業が増えてくることが予想される。

紙の雑誌がiPhoneアプリに
 現在、紙の定期媒体をiPhoneアプリにした例としては、ヤッパ+産経新聞社の「産経新聞」(新聞)、ボイジャー+講談社の「クーリエ・ジャポン」(月刊誌)、主婦の友社の「Ef」(月刊誌)などが有名だ。産経は広告モデルを模索し始めたところで、クーリエ・ジャポンは毎月個別のアプリを販売するというスタイル。Efも同様だ。

 毎月アプリを出すというのは、実はけっこう大変なことだ。アイティメディアも(外部デベロッパーを通じてであるが)iPhoneアプリを4種類リリースしているので、毎月決まった日時にアプリをリリースする大変さはよく分かる。アプリとして出すので、Appleの審査基準(表現に関するレーティングを含む)もクリアしなければならない。さまざまな記事が入る雑誌でそういうものをクリアしていくのは困難なことだ。

 しかし、いったんコンテンツプレイヤーとしての外枠を作っておいて、中身だけを入れ替えていき、その都度(つど)課金していくというスタイルならば、デベロッパーやコンテンツプロバイダーの負荷は少なくてすむ。問題はその課金のシステムだが、Appleは、「In-App Purchase」(アプリ内課金)という仕組みをiPhone OS 3.0で提供し始めた。最初にアプリを作っておけば、あとはそのアプリで再生できるコンテンツだけを出していけばいい。

 この仕組みを念頭に置いたオーサリングサービスを出している企業も既にある。インフォテリアは「Handbook」で、プレーヤーを無償で提供し、オーサリングサービスをコンテンツプロバイダーに有償で提供するという仕組みをスタート。HyperCardやDirector、Authorwareといったかつてのオーサリングソフトをほうふつとさせるなかなかのアイデアだ。自前でプレーヤーを開発したり、適当なデベロッパーが見つからないコンテンツプロバイダーにとっては朗報だろう(アプリ開発が不要、インフォテリアがiPhoneコンテンツ配信基盤を提供)。

 実際に、このタイミングで大手の電子書籍サイトがiPhone向けに相次いで本格参入を果たしている。ひとつは、マンガの品ぞろえでは世界最大を誇るイーブックイニシアティブジャパン。昨年、Windowsで購入した電子書籍をiPhoneで見るためのビュワーを無償公開していたが、先週、Macでも購入可能にし、さらにはiPhone本体でもマンガなどを直接購入、支払いまでiPhone版Safariだけでできるようにした。購入が済むと、iPhone版リーダーアプリの「ebi Reader」でダウンロードし、そのまま読むことができる。

 少年マンガ、少女漫画、さらには成年コミックまでが購入可能。App Storeの審査基準では絶対に通らないような大人向けコミックスや書籍もここでは入手できるのだ。

 電子書籍の最古参であるボイジャーの電子書籍配信サイト、理想書店もiPhoneに最適化する。同社が長年育ててきた電子書籍フォーマットである「.book」をiPhoneで読むための「理想BookViewer」を6月26日から提供。角川書店、講談社、リイド社、幻冬舎のコミックスを皮切りに、2万5000タイトルの作品を順次提供していく。この配信システムには漫画家向け描画アプリの定番である「ComicStudio」のセルシスも協力している。

 イーブックイニシアティブジャパンとボイジャーの2社は既にコンテンツ配布のためのインフラを持っており、そこを利用するため、In-App Purchaseの機能を使う必要はない。しかし、In-App Purchaseが提供されれば彼らのように配信・課金インフラを持たないところもビューワと連動したコンテンツ配布ビジネスに参入できる。両社の動きはIn-App Purchase導入に後押しされた動きと見ることもできるだろう。

ダウンロードコンテンツが花盛りに iPhone版アイマスに期待
 In-App Purchaseの応用範囲は、雑誌のような静的コンテンツだけではなく、ゲームでの利用が最初から想定されているようだ。ゲーム専用機向けタイトルでも、単にゲームカートリッジを売るのではなく、そのゲーム内で使えるアイテムをさらに販売するという仕組みをうまく使って成功しているところが出ている。

 もっとも成功した例が、いわゆるアイマス。バンダイナムコゲームスの「THE IDOLM@STER」だ。iPhoneの3D性能はPSPよりも上なのだから、In-App Purchaseを使えば、さまざまな衣装や小道具、楽曲をアプリの中から購入することができる。PSPのようにWi-Fi環境に拘束されることもないから、購入機会は増えるだろう。

 さらに、ゲーム内で作成されたパフォーマンスをネットワークで共有するといったところはiPhoneの真骨頂だ。ぜひ実現してほしい。バンダイナムコの米国法人Namco Networks Americaは、東北大学川島隆太教授監修の脳トレソフト「全脳トレ」をiPhone向けにリリースしたばかり。既に15本のゲームタイトルを出しているので、iPhone版アイマス、ぜひ期待したいところだ。

 もちろん、キャバクラゲームと言われている恋愛シミュレーション「ドリームクラブ」(Xbox 360用、ディースリー・パブリッシャー)でもいいわけだ。こういったアプリは、リビングに置かれたゲームマシンよりは、プライバシーを確保できる携帯プラットフォーム向きだから。

 米国ではマフィアゲームなどの、ポイント購入で稼ぐタイプのゲームが多くなりそうだが、日本で期待されているのは、バーチャルアイドル系のダウンロードコンテンツだと考えている。

iPhoneアプリはDS、PSPデベロッパーの実験場になる
 iPhoneは既に新種ゲームの実験場だ。既にそうなってると言っていい。ニンテンドーDSやPSP向けタイトルの開発、流通にかかるコストは膨大だ。ユーザーの数は多いとはいえ、ゲームメーカーも失敗はできない。そこで、実験的なアプリは「とりあえずiPhoneで」ということが増えていきそうだ。

 先に挙げた、In-App Purchaseによるダウンロードコンテンツ、iPhone OS 3.0で実装された、プッシュ通知(Push Notification)によるキャラクターからのメッセージ、Bonjourを使ったP2Pネット対戦など、DSやPSPにも応用できる新しいゲーム企画が、iPhoneならば手軽に作って、すぐに流通させることが可能。DSやPSPはその成功したものだけを発展させればいい。

 プッシュ通知は主にインスタントメッセージング(IM)など、常時走らせておくアプリを、マルチタスクを使わずに「通知だけする」仕組み。「Second Life」や「おいでよ どうぶつの森」のような仮想現実系ゲームでは、そのアプリを起動していないときには、その世界で何が進行しているのか分からない。それをプレイヤーに通知する手段としてプッシュ通知は有効だと考えられる(iPhone版AIMがPush Notification対応、ただし有料)。

AR(拡張現実)が現実に
 「セカイカメラ」「ARToolKit」「電脳フィギュア ARis」、これらはいずれもカメラで見えている画像に、デバイス上で作り出すイメージや情報をオーバーレイするものだ。広義のAR(拡張現実)に分類できる。iPhoneでこういった技術を実装する場合、これまでデベロッパーに対して制限が課せられていたが、iPhone OS 3.0で一部開放される可能性がある。

 そうすれば、これらの技術を使ったアプリが登場してくるはずだ。あなたが見ている風景で歌って踊る初音ミク、というのも現実になるのだ(Windows Mobileでは既にARToolKitを使ったこのアプリは存在する)。iPhone 3GSに実装された電子コンパス機能を組み合わせれば、さらに魅力的なAR端末となるだろう。

 ただし、現時点ではカメラ系アプリのかなりの数がAPI制限の変更によってApp Storeの審査にひっかかっているという情報もあり、iPhoneが一気にARデバイスの標準となるかどうかは不透明だ。場合によっては制限が少なくコンパス機能を持つ、NTTドコモのAndroid端末「HT-03A」が先行するかもしれない。

iTunes連動は前提に
 iPhoneで忘れられがちなのが、iTunesとの連動だ。iPhoneは、事実上の標準であるiTunesの音楽ライブラリをそのまま入れて持ち運べる「iPod携帯」なのだが、サードパーティーのアプリでは、その音楽を使うことができなかった。一部のアプリにiPodを流しっぱなしにして、同時に楽器を演奏したり、BGMにすることができるというものがあったが、アプリの中から曲を呼び出したりはできなかった。曲を終了することすらできなかったのだ。

 iPhone OS 3.0からは、アプリからプレイリストの表示、楽曲の再生、ジャケット表示などが可能になり、「独自のiPodユーザーインタフェース」を作って販売することができる。曲のタイトルのキーワードなどをタグクラウドにして表示したもの、ジャケットを3D表示させて楽曲を選べるようにしたもの、ポケットの中に入れたiPhoneの曲再生を手探りだけでできるようにするもの、といった「一芸に秀でた」iPodアプリが既に登場している。

 さらに、これからは「Pandora」などのネットラジオがiPodライブラリを活用して、AppleがiTunesで提供しているGeniusサービスみたいなものを組み込んでくるのではないだろうか。手持ちの楽曲で気に入ったのがあれば、それに似た楽曲を選び出してストリーミング再生してくれて、気に入ったらiTunes Storeで購入し、デベロッパーはアフィリエイト収入を得るという仕組みができそうだ。

 iPodライブラリから選んだ楽曲にボーカルキャンセリングを施し、そこに歌詞を取得してオーバーレイさせるお手軽カラオケアプリも登場するだろう。

 楽器アプリのデベロッパーはこの機能への対応が必須となるだろう。iPod楽曲ライブラリにアクセスして、一緒に演奏できる、というのがデフォルトになるのではないだろうか。「Amazing Slow Downer」のように、楽曲のテンポを落として一緒に演奏できるような楽器アプリが登場するのも時間の問題だろう。

 ストリーミングラジオの音楽をダブ化するアプリが出て話題になったばかりだが、次のバージョンではiPodライブラリを使えるようになるだろうし、DJ系アプリはiPodライブラリの使用は当初から望んでいたことだ。それができないから、アプリ内に楽曲ファイルを転送するといったことをしなくてすむのである。iPhone最強の資産である「iPodライブラリ」を自由に使えるという意味で、ほかの携帯プラットフォームは太刀打ちできないのだ。

キーボードが使えるようになる
 これまで、iPhoneのDock(従来のiPodと同じ形状)は、充電と音楽再生以外の目的では使えなかった。それが、iPhone OS 3.0からは開放される。既にいくつものプロジェクトが走っているに違いないが、複数の企業が考えていると推測されるのが、キーボード。iPhoneのドックに直接、もしくはBluetoothで接続されるキーボードだ。

 テキスト入力専用デバイスとして、キングジムの「ポメラ」が大人気だが、リュウドなどから出ている携帯電話用のBluetooth、USBキーボードがiPhoneで使えればかなりの人気になるだろう。そうすれば長文の入力も苦にならなくなる。iPhone OS 3.0ではカット・コピー&ペースト機能もついたので、「iPhoneをワープロ代わりに」というのも、夢ではない。使いやすいキーボードとそれに最適化されたエディタアプリがあれば、けっこう高額なものでも売れるのではないだろうか。

 キーボードはテキスト入力に限らない。音楽用キーボードも登場が望まれている。シンセサイザー、ギター、ピアノ、メロトロン、ボコーダーなどのさまざまな楽器アプリがiPhone用に登場しているが、キーボード系の楽器として使うには画面が小さすぎる。ソフトウェアシンセサイザーやサンプラーとしての優秀さは証明されているので、あとは外付けキーボード(MIDIキーボードのようなもの)を付けられれば、それだけで弾き語りができる。

 コルグの超小型MIDIキーボード「nanoKEY」あたりがDockコネクター経由でiPhoneに接続できれば面白いことになりそうだ。

 WWDCの基調講演では、血圧計をはじめとする医療系センサーがDock開放の事例として使われていたが、ゲームコントローラなど、エンターテインメント向け周辺機器も登場するだろうし、それと連動したアプリケーションも登場してくるのではないだろうか。

 iPhone 3GSは米国でリリースされ、すぐに100万台に到達。日本でも26日から販売が始まる。デベロッパーはしばらくは既存アプリの3.0対応に追われるだろうが、すでに3.0でなければできないアプリや周辺機器のリリースが追って始まるだろう。

 ――と7つの予想をたててみた。おおまかな流れは外していないつもりだが、AR用のAPI開放とか、キーボード接続の認可とか、Appleの判断基準が読めないものもある。それでも、今回のiPhone OS 3.0はデベロッパーにとって最大規模の「開放」であり、歓迎もされている。これまでみたこともない画期的なアプリやハードが登場するのは間違いない。その画期的なアプリやハードを古いiPhone 3Gで使うか、新しく高速なiPhone 3GSで試すかが、26日以降の新たな悩みとなるかもしれない。

投稿日:2009年06月25日 21:40

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